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なつかしい人

最寄のバス停で待っている時の小さな楽しみがありました。道路を隔てた向かい側にアパートが立っていますが、そこの二階のレースのカーテンがかかった窓を見上げると、大抵そこにチンに似たぬいぐるみのような小さなワンちゃんが腹ばいになって外を眺めていました。白い体に目の周りが黒いワンちゃん。時々白いレースのカーテンを開けて、小柄なおばあさんがワンちゃんの後ろに立っていて、一緒に外を見ていることもありました。おばあさんはワンちゃんと一人暮らしをしているようでした。バスを待ちながら、なぜかいつもあの二階の窓に吸い寄せられるように目がいってしまいます。ワンちゃんが座っていない時は、何だか物足りないような気がしていたものです。

時折おばあさんがワンちゃんを散歩に連れているのを見かけることがありました。そのおばあさんとは言葉を交わしたことはないけれど、彼女を見るとなぜか無性になつかしいような気持ちがしていました。なぜだか分からないけど、そのおばあさんを見ると無関心でいられない。いつまでもお元気でいてほしいと願いたくなってしまう。

ところが一ヶ月ほど前でしたか、バス停で待っている時にいつものようにふとあの窓を見上げると、何と白いレースのカーテンが取り払われていて、窓の向こうは誰も住んでいないかのようにがらんと空になっていました。その二週間ほど前にはワンちゃんがいつものように腹ばいになって外を眺めていたというのに。思いがけないことで何だか淋しくなりました。

がらんと空き部屋になっていても、バス停で待つ時にはついあの二階の窓を眺めてしまう。今日そのアパートの近くを通った時、二人の若い男性が大きな冷蔵庫を抱えて、アパートに入っていくところでした。側には小型のトラックもとまっている。あのおばあさんとワンちゃんの部屋に住むんだろうか。何だか淋しいな...これからもあの二階の窓を見上げてしまいそう。
 
by honeyfire | 2009-11-24 02:48 | ふれあい