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言葉を越えて

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写真は今朝の朝焼け

この間ニュールンベルグを訪れた時、夫の幼馴染と久しぶりに会いました。ニュールンベルグに住んでいた頃、彼の家に時々招かれていたものです。彼のお母さんは恰幅のいい人でしたが、どことなく日本のお母さんを思わせるような、穏和な微笑みが魅力的な人でした。初めて食事に招かれた時のことを思い出します。ドイツ料理の中で私が好きな料理を聞き出していて、お好きでしょうとわざわざ作ってくれていました。

食事の後で紅茶をいただきながら、夫や幼馴染が子供だった頃の写真や色々古いなつかしい写真を見せていただいていました。お父さんが兵隊だった若い頃の写真もあって、それを見ながらお父さんが昔の話をしみじみと語ってくれました。

戦争が終わる少し前、彼はロシア軍の捕虜になってロシアの辺地の捕虜収容所に送られたそうです。彼の趣味は絵を描くことだったのですが、収容所で同じく捕虜だった日本人の画家と言葉は分からないけど、絵を通して親しくなったそうです。ある時彼は大病を患ってしまい寝込んでいたのですが、そういう困った時に、親しくなった日本人捕虜がずっと付いていてくれて、誠意をこめて看病してくれたそうです。これがきっかけで二人は益々懇意になったのですが、やがて戦争が終わり、戦後の混乱した状況の中で二人は行方知れずに離れ離れになってしまいました。幼馴染のお父さんは、後で状況が落ち着いてから、色々その日本人の居場所を探そうとしましたが、見つからなかったそうです。何十年経っても、できるならば再会したいとなつかしがっていました。

日本人捕虜だった方も現在健在でいらっしゃるのなら、昔捕虜収容所の過酷で劣悪な環境下で、言葉を越えた友情を交わしたドイツ兵のことをなつかしく思い出しているでしょうか。

「言葉はあとからついてくる 先に伝わるものは、魂の声」というガユーナ・セアロの言葉があるそうですが、魂のふれあいには必ずしも言葉の媒介を必要としないのかもしれませんね。
by honeyfire | 2010-01-05 17:28 | ふれあい