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モンゴルの風

ドイツの南部に住んでいた頃の話です。ある日繁華街を歩いていたら、どこからか悠長な歌声が流れてきました。音がする方へ近付いて行くと、デパートの横で4,5人のモンゴル人の若者が民族楽器を奏でながら、モンゴルの歌を歌っていました。ホーミーをはじめとするモンゴルの歌声はその時初めて聞きました。私は輪になって並んでいる人たちに交じって、何曲もじっと聞き入っていました。

聞いていると、モンゴルの大草原を吹き抜ける風を感じるようでした。そして風の中を駆け抜ける野生の馬の群れ。純真そうなモンゴルの若者が立っているスポットだけが、大きな見えない透明なドームで周りの異質な喧騒から守られているかのように、別の世界の波動が振動しているようにも感じられました。

あまりにも感動したので、カセットまで買ってしまいました(CDがなかった時代です)。後にも先にも街頭演奏者から買った唯一のカセット。モンゴルの風を感じたくなると、このカセットを聞いていたものです。もう何度も何度も聞きすぎて、部分的に伸びてしまったぐらい。それまでモンゴルには関心がなかったのに、モンゴルに惹かれるようになりました。

モンゴルでは空色は聖なる色だそうです。青い空の色は目に見えるもの、目に見えないもの全てを創造した神を象徴しています。モンゴル人は大切なものを空色の絹の布で包むそうです。そして旅人にお別れを言う時は、「青空の下であなた自身の道を歩んで行きなさい」と言うらしい。なんて素敵なお別れの言葉なんでしょう。
by honeyfire | 2010-02-20 15:16 | 印象