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チュニジア南部の旅3-砂漠の虹 

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チュニジアではラクダは砂漠の舟と呼ばれているそうです。サハラ砂漠への入り口ドゥーズへ向かう途中でラクダの絵の道路標識が所々に立っているのを見かけました。ガイドがこれはラクダが横切るので注意という意味だと説明してくれたので、私がマイアミからフロリダ南端の島々へ向かう途中でワニの絵の道路標識を見かけたと話したら、隣でハンドルを握っているアラビア語しか分からない運転手にも通訳してあげながら笑っていました。

黄昏前にやっとサハラ砂漠の入り口へと着きました。ラクダツアーの出発ステーションで一人一人頭にターバンを巻いてもらい、キャラバンケープも着せてもらい、いよいよラクダが待っている所へと向かいましたが、向こうの空の雲行きが怪しい。何だか不安。それでもツアーは決行されました。私は大人しくうずくまっている大きなラクダの背にまたがりました。ラクダがまず後足を立て、曲げていた前足を立て、立ち上がると、思いのほか高い。ラクダってこんなに大きいものなのだと実感しました。

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最初の乗り心地は正直言って、あまり気持ちのいいものではありませんでした。私が乗ったラクダは特に気性が激しく、他のラクダにけんかを売りにいき叱られるような腕白ぶりで、乱暴な歩調で歩くので、お腹のあたりが右へ左へと激しく揺さぶられました。食事した後だったら、気持ちが悪くなる人もいるのではないだろうか。ずっとこんな調子で行くんだろうかと内心不安になってきました。でも進んでいく途中、ラクダ引きのひょろっと背の高いベドウィン(砂漠の住人)の青年が、このラクダはシバという名前で7歳なんだよと嬉しそうに話してくれました。慣れてきたのか、ラクダはやがて大人しく穏やかな歩調で進んでくれるようになりました。時折シバと名前を呼んであげたら、青年も嬉しそうにシバと呼びました。彼はフランス語しかできず、英語は片言しか分からなかったけど、度々振り返り振り返り親しげに微笑みながら話しかけてくれました。私が簡単な英語で日本では月の砂漠という歌が好まれているのよと話すと、愉快そうに笑っていました。

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ベドウィンの若者。これはポストカードですが、私が乗っていたラクダを引いていた青年もこんな感じでした。

砂漠の中を進めば進むほど、雲行きが怪しくなり、向こうの空では雷が鳴り稲妻が走っていました。これから1時間も行く予定。雷が鳴っている中を砂漠のような平地を行くなんて、危ないじゃないですか~。こんなのあり~と思いながら進んでいくと、やがて向こうの方から黒馬に乗って駆けてくる怪しげな者がいる。ツアーガイドが途中で馬に乗る者が現れて一緒に写真を撮ろうと言っても無視し、くれぐれも注意せよと忠告していたのを思い出しました。黒装束で黒い馬に乗った男は私達のグループに近づいてくると、色々話しかけてきました。私達が無視していてもずっと付いてくる。向こうの方から私を見つけると、ジャポネ?と聞き、コンニチハ、アリガトウと言ってくる。私が挨拶を返すと、ジェルバ島でのように彼も喜んでいましたが、お元気ですかと日本語で言ってみたら、意味が分からなかったのでしょう、考えた挙句、チューチューと返事を返してきました(笑) おっ、なかなか憎めない奴じゃないか。

そうこうする内にポツポツと雨が降り出し、大きな稲妻も走り、本格的に降り出しました。冷たい風も吹き、とても寒い。前もってセーターを2枚重ねジャケットを着て、その上にあのキャラバンケープをはおっていたのですが、やはり寒さは身にしみる。たちまち濡れ鼠になりました。これで後で風邪を引かなかったのも奇跡。それにしても、わざわざ砂漠に来て雨に降られるなんて、お笑い草にならない。他の一行もげっそりとしている。私が砂漠で雨が降るなんて幸運のしるしよと励ますと、皆苦笑いしていました。

できるならすぐこのまま引き返したいところでしたが、ラクダ引きたちは先に進んで行き、やがてある場所で止まったかと思うと、ラクダを座らせ休憩を取りました。私達もラクダを降り、冷たい雨に打たれながら何もすることなく、時をもてあましながらぼーっと立っていましたが、ラクダ引きたちはこんな激しい雨の中でものんびりとしていました。私達はたまらなくなってドイツ語で引き返したいということを言ってみましたが、彼らにはドイツ語が通じなかったし、英語でもらちがあきませんでした。先程の黒い馬に乗っていた男にはドイツ語が通じたということを思い出した夫は、ヘイ、君ドイツ語が分かるんだろうとその男に通訳を頼みました。最初山賊のようなイメージだったその男は天使に変わり、私達はもう先に進みたくないということをラクダ引きたちに通訳してくれ、その後大人しくどこかへ行ってしまいました。

やがて引き返すことになりましたが、ラクダを一度降りた為、座る所がすっかりびしょびしょに濡れていました。ラクダ引きの青年は小さい毛布のようなものをかけてくれましたが、それでも濡れていることに変わりはない。でも乗るしかないのでした。私達は濡れたラクダにまたがって、風が吹き激しく降り続ける雨の中をどうにでもなれという気分でゆっくりとしたラクダの歩調で進んでいきました。もう戻りたいという一心だけで砂漠を味わっているゆとりなんてありません。

やがて遠くの方に出発ステーションの建物が見えてきて、ほっとしました。途中で黒焦げになった幾本かの椰子の木を見かけました。きっと雷が落ちたことがあるのでしょう。ゾーッ! 建物の中で待っていたツアーガイドは私達を見つけると、中から飛び出してきて迎えてくれました。やっと、着いた。安堵して振り返ってみると、砂漠の地平線の上空にくっきりと完璧な弧を描いた二重の虹がかかっていました! 虹を見て、私は雨にうたれるのも忘れ、小躍りしながら喜びました。寒い思いをしたにせよ、砂漠の上空に虹を見るなんて!

そこからじゅくじゅくに濡れた気持ちの悪い状態でバスに乗り込み、近くのホテルへ向かいました。ホテルの人達は私達の濡れ鼠の姿を見て皆同情していました。割り当てられた部屋にいき、すぐにバスタブにお湯を入れお風呂に浸かりました。砂漠の町では水は貴重。お湯も黄色く錆びたような色をしていましたが、暖かいことには変わりない。

びしょびしょに濡れたジーンズが明日までに乾くことを祈りました。部屋は冷んやりしていましたが、ヒーターをみつけました。これなら明日まで乾くかもしれない。ヨガの練習用のラフなズボンを二人分持ってきていて良かった。それに着替えて夕食に行きました。夕食の後はやっぱり疲れていたのか、ベッドに横たわるとすぐさま眠りにつきました。翌朝の次の目的地に向けての出発は早い。

(何しろ雨が降っていたので砂漠の写真を撮ることができませんでした。この記事でアップした写真はポストカードです)

でも1枚だけ、あまりいい出来ではないのですが、虹の写真を。

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by honeyfire | 2010-02-08 22:12 | 旅(国外)