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とあるドーベルマンの思い出

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飼い犬には流行があるらしく、最近ドーベルマンやシェパードやコリーやボクサーといったような種類をあまり見かけなくなりましたね。ドーベルマンといえば、以前近所でよく見かけたチャーミングな気になるドーベルマンがいました。キッチンの窓から小さなT字型交差点が見えるのですが、キッチンに立って料理していると、時々赤いスカーフを粋に首に巻いた耳を垂れたドーベルマンが、交差点で車道を横切る前に、じっと立ち止まっているのを見かけたものです。飼い主は後からゆっくりやってくる。そのドーベルマンは時折首だけ後ろに振り返りながら、飼い主がやってくるのを待っている。車道を横断せずに歩道の角でじっと立っているそのエレガントな佇まいは貴婦人のようで、惚れ惚れしてしまいました。飼い主が近付いてくると、歩を進め、道を横切っていくのです。その姿にいつも感心していました。パン屋の前でもよく見かけましたっけ。最近久しくその犬も飼い主も見かけない。どこかに引っ越しちゃったのかしら。なんだか淋しい。

ずっと以前ムルゴという名前のドーベルマンになつかれていました。友人夫妻が飼っていた犬で、ご主人はドイツ人で、奥さんはドイツ人とギリシャ人のハーフ。ムルゴという名前は、ギリシャ語で「悪戯っ子」という意味らしいです。二人は仲睦まじい夫婦でしたが、突如離婚してしまいました。理由は、ご主人の方が是非ともカナダに移住したいという夢を持っていて実行しようとしていたのですが、奥さんの方がそれに反対で、意見が合わなくなったからだそうですが、もっと他にも微妙な理由があったのかもしれません。彼等のようなお似合いの夫婦が別れてしまって、非常に残念でした。よくカップル同士で一緒に色々楽しく行動を共にしていたのです。

彼等は離婚し、ドーベルマンのムルゴはしばらく奥さんの身内の家に預けられることになりましたが、数ヶ月も経たないうちに何の理由もなく急死してしまったのです。ムルゴは友人夫婦に子供のようにとても可愛がられていたので、結びつきが深かったのでしょう。夫婦の関係がぷっつんと切れた時、一緒に繋がっていたムルゴの関係の糸も切れてしまったのでしょうか。生き物って、とっても敏感ですよね。私はムルゴがとても大好きだったので、残念で仕方がありませんでした。ムルゴに最後に会ったのは、奥さんのアパートに数日間連れてきてもらってた時。ソファに座ってたら、キスでもするかのように、顔をじんわりと私の顔の方に寄せてきたムルゴ。いつかまた野原で一緒に遊べるかと思っていたのに...急に逝ってしまった。

いつかご主人の方がムルゴにまつわる愉快な話をしてくれたことがあります。しばらく定期的に犬の調教所で訓練させていたのですが、そこの調教所に行くと、まず金網がめぐらされたグラウンドがあって、そこにいつも一頭の大きな犬がいたそうです。ムルゴと仲が悪くて、顔をつきあわせると両方が金網に沿ってダーッと駆けながら、金網越しに吼えあっている。毎回同じことの繰り返し。ある日、また同じように両方の犬が金網に沿って吼えながら走っていった時、一番隅の普段閉まっている扉が、なぜかその日は開いていたそうです。犬達ははじめて金網の介在なしに、向かい合ったわけですが、どちらも一瞬きょとんと立ち止まり、体をぶるぶると震わせて、どちらも言いあわせたように金網に沿ってまた元の方角へと吼えあいながら戻ってきたとか(笑)

ふとムルゴのことを思い出しちゃったので。
by honeyfire | 2012-11-24 21:09 | 思い出